おしるこ好きですか?
アパートの部屋に鍵をかけて、金属でできた階段を降りながら遠くを見渡す。
夕焼けが、街の奥に沈んでいく。ヘッドフォンはひび割れた音質で、流行りのロックを鳴らしている。
なんとなく、夜勤に向かう足取りが重くなる。
「あのう」
私は目を細めた。世界が終わりに向かう中、私の一日は始まるのだ。
「あの」
「はいっ!?」
強めに声を掛けられ、慌てて振り返った。
アパートの階段。その一番上に、見知らぬおじさんが立っている。
手入れの行き届いた丸坊主に、迷彩柄の制服。反射的に背筋を伸ばす。
ヘッドフォンを外してぱちぱちすると、おじさんが眉間のしわを深めて目をこらすのが分かった。
「203号室の方ですか」
「はあ……そうですけど」
私は来た道を戻って階段を上がる。
自衛官の方が、何の用だろう。私はバックのひもを握りしめた。
「もしかして、ここで何か事件ですか? 事情聴取?」
「は?」
「え?」
自衛官の方を見開いた。その反応に私も面食らう。
しばしの間。
秋風がぴゅうと吹く。
「あー、いや、そうじゃなくて。隣に越してきたんで」
「えっ! あ、そういうこと……。すみません、私てっきり」
かっと顔が熱くなる。事情聴取をするのは自衛官じゃなくて警官の方だ。
思わず顔をそらす。ちらりと横を向くと、自衛官の方は思い切り呆れた表情をしていた。
じと目が恥ずかしい。
そういえば、ちょっと前に隣の角部屋に人が越してきたと、大家さんから聞いていた。
今までまったく会わなかったし、隣から生活音もしなかったから忘れていた。夜勤生活で昼夜逆転生活をしているから、自衛官のような方とは生活サイクルが合わないのだろう。
考えてみればこの前、土日寝ているときに何回かチャイムがなった。勧誘かなにかだと思って無視していたけど、ご挨拶にきたこの人だったりするのかな。
だとしたら申し訳ないな。
改めて自衛官の方を見つめた。むっつりしていて、気難しそうな見た目をしている。
「帰宅したばかりで制服なんで、驚かせましたよね」
「いやあ、はは……すんません」
「引っ越しそば……は、いまはお渡ししないほうがいいですか」
「あ、いや、受け取りますよ。バイトまでまだ時間あるんで」
「すみません」
自衛官の方がくるりと踵を返して、一番奥の部屋へと引っ込む。ややあって、桐箱を差し出された。
「三沢岳明です。ご迷惑おかけするかもしれませんが、よろしくおねがいいたします」
「や、そんな。こちらこそよろしくお願いします。で、敬語使わなくていいですよ、私みたいな若造に」
頭をさげられ、恐縮してしまう。
「ゴミの分別のこととか、わからないことあったら聞いてください」
「なにかあったら、よろしく。……仕事行く前に、悪かったな」
「いいえ。幸先いい一日になりそうです」
にっこり笑って、改めてぺこりと頭を下げる。
自衛官の方――三沢さんと別れ、上等そうな桐箱に入ったそばをとりあえず台所に置いた。
結構時間を食ってしまったから、自転車で行かないと間に合わない。
玄関にしまっていたマウンテンバイクを部屋から引っ張り出す。アパートの階段を慌てて降りて、サドルにまたがった。
自転車で駆けると、秋風がちょっと肌寒い。
隣の角部屋は長らく無人だった。これからは夜中騒ぐのは控えたほうがいいかな。
そんなことを思いながらペダルを踏み込む。
勤務先のコンビニについたところで、鍵をかけ忘れたことを思い出してあぁっと声をあげてしまった。
田舎者の意識というのは、こういうところにでるんだ。
ま、いっか。どうせ金目のものなんてありはしない。あんなぼろアパートに空き巣が入るなら、入った人はちょっとアホだ。
……そういえば、そんな安くてぼろいアパートに、どうして自衛官の方が引っ越してきたんだろう。
取り柄と言えは洋式トイレとお風呂が別ってところぐらいなのに。
若い方ならともかく、三沢さんは年配の方だった。
ま、それもどうでもいい。
お隣に、熊みたいな体格の男の人が引っ越してきた。ただそれだけの話だ。詮索なんてめんどくさいし、考えるだけ無駄無駄。
どうせ、私の人生には関係ない。私の人生も三沢さんには関係ない。
ただ隣の部屋に住むだけの他人だ。そんなものだ。
そんな風に考えながら、今日も仕事は淡々と、変わりなく過ぎていく。
それが――三沢さんと私の、変わり映えのない出会いだった。
***
「あ……こんばんは、三沢さん」
アパートに帰宅し、玄関の前で鍵を探しているとお隣さんの玄関が開いた。
挨拶しないのも失礼なので、控えめに声をかける。
三沢さんはじろりと私を見下ろした。
この人が引っ越して来てから三か月ほどが経つけれど、三沢さんの顔を見るのは引っ越しの挨拶のときを含めて三回目だ。
なかなかレア度が高い。
三沢さんは白くけぶる空に目を細める。ただでさえ不機嫌そうな表情がさらに加速した。
薄い唇はぼそぼそと言葉を吐きだす。
「おはようございます、だろ」
「あー、夜勤明けなもんで私の夜はまだ終わってないんですよ。失礼しました、おはようございます」
「ああ。ご苦労さん」
「三沢さんこそ、お勤めご苦労さまです。……ご苦労さま? で、あってます?」
「年上っていうか、目上には『お疲れ様』が正しいな」
「今日もお疲れ様です」
「そんな気にしなくていいぞ」
深く会釈すると、短い相槌が返ってくる。顔を上げるころには、三沢さんはアパートの階段を下りて行くところだった。
とんとんとん……と小刻みに響く足音はきびきびしていて軽快だ。規則正しくて、聞いていて心地いい。
迷彩柄の制服といい、なんとなく、お隣に住んでいるのが自衛官さんなんだなあと実感する。
ご近所は三沢さんのことをやくざのようで怖いと言うが、私は三沢さんが好きだ。
それに自衛官だ。いざという時に市民を危険から守ってくれる。たしかにこわもてだけども、やくざと一緒にするのはひどいと思う。
ぼんやりと考えながら鞄を漁っていると、やっと鍵が見つかった。
三沢さんとの遭遇は珍しい。得した気分になりながら部屋に入って、そのままお布団へとなだれ込んだ。
いい夢見れそう。
***
一週間後、私は眠たい身体を引きずって朝のゴミ出しへと繰り出した。夜中に出すとカラスが来ると怒られるのだ。
アパートの階段を下りて行くと、ゴミ出し場に向かう大きな背中があった。肌色の丸坊主は間違いなく三沢さんだが、服装はいつもと違う。グレーのスウェット。つまりパジャマか。
ゴミ捨て場にたむろして井戸端会議をしていたおばちゃんたちが、三沢さんに気付く。とたんに笑顔がぎこちないものになった。
ずいぶんと怖がられているなあ、三沢さん。
――おはようございます。
――あ、み、三沢さん。おっおはようございます……オホホホ。
――いい天気ですね。
――そ、そうですね。アハハ……。
私はゴミ捨て場に向かいながら、三沢さんとおばちゃんたちの会話を脳内で想像する。だいたい間違ってはいないはずだ。
三沢さんを避け、蜘蛛の子をちらしたようにおばちゃんたちはどこかへと行ってしまう。三沢さんの吐息は白い靄となって消えて行く。
「おはようございます、三沢さん」
「お前か」
「お前です」
すこし離れたところから声をかけると、三沢さんは鼻を鳴らした。すこし気まずそうな態度に感じるのは、おばちゃんたちとのやりとりがあったからか。
グレーのスウェット姿に、便所サンダル。こわもてに若干のだらしなさがプラスされると、なるほど確かに不思議と威圧感があるものだ。
夜更かししたのか寝起きだからなのか、腫れぼったい眼も睨まれているように思える。私は気にしないけど、おばちゃんたちには怖いんだろうな。
三沢さんは下ろしかけたゴミ置き場のネットを再び持ちあげた。私を待ってくれているらしい。すこし小走りになって、三沢さんに並ぶ。
すでに積まれたゴミ袋の上にゴミ袋を載せるも、バランスを崩して落ちそうになる。私が直す前に三沢さんの手が伸びた。
載せなおしたゴミ袋に、三沢さんがネットをかける。
ありがとうございます、と会釈した。
私を待ってなくても、よかったのに。こうした些細な優しさや律義さを好むか疎むかは人に寄るところだ。私は……すこし疎ましいと思う。
申し訳なく感じてしまう。
「今日は合ってたな」
「へ?」
「朝の挨拶」
「ああ……そうですね。おはようございます」
「もう聞いたって」
私が笑うと、三沢さんは眉を上げる。これ、もしかして笑ってるってことなのかな。三沢さんの雰囲気がすこしだけ柔らかくなった。
「今日はお仕事お休みなんですか」
「まあな」
「それじゃ、ゆっくり羽伸ばしてくださいね」
「ああ」
それきり黙りこんだ。
ゆっくり羽を伸ばしてくださいね、という権利が私にあるんだろうか。と、共に歩きながら考える。
要らぬお世話じゃないだろうか。隣人に干渉されては、息がつまるだろう。
歩幅が違うから、同じタイミングで歩きだしたのにすぐ三沢さんが先を行く。階段を上る三沢さんをぼんやりと眺めた。
大きな背中が階段を上り終わり、部屋に向かって角を曲がれば三沢さんが視界から消える。私が階段をのぼりはじめたタイミングだった。
目をつむって、足音に耳を澄ませる。
とん、とん、とん、とん、とん。
音の速さも、響きかたも違う。三沢さんの足音よりも、私のほうが重たそうな足取りに聞こえた。実際夜勤明けなので身体は重たい。
三沢さんはよくあの巨体で軽やかな足音を踏めるとなと感心した。
階段を上がりきると、三沢さんが玄関の扉をすこしだけ開けた状態で、こちらのほうを向いていた。
なにかあったんだろうか。
「どうかしましたか」
「お前、足遅いな」
歩み寄りながら答えると、訳の分からない言葉。
三沢さんはそれだけ言うと興味をなくしたように扉をくぐって、自分の部屋へと入っていった。重たい扉が閉まれば、大きな音が響く。
「……なんなんだ? あの人」
首をかしげる。確かに私は、のろのろと歩く方が好きな人種だ。反面、三沢さんの足取りはしっかりとして早い。
とはいえ、二人で歩いていたんじゃないんだから遅いなどと言われる筋合いはない。
もっとも三沢さんにとっては単なる感想で、それ以上の意味はないんだろうけども。
――ん? あの人、それだけ言うために私を待ってたのか?
思い至るとふっと笑えてきた。
ゴミ出しを終えたらさっさと寝てやろうと思っていたけど、朝の運動で眠気も冷めた。どうせならおしるこでも作ろうかな。
吹きすさんだ木枯らしに体温を奪われて、慌てて部屋へと戻る。
買いこんだままわすれていたあずきの存在を思い出して、私はおしるこづくりにとりかかった。
***
料理は愛情だ、という言葉は一理ある。万理あるかもしれない。
私は私のために料理を作るのが好きだ。他人のために、他人の喜びを期待して料理を作るなんて馬鹿げてる。
私が作る料理なんだから、私の舌にあえばいいのだ。他人のことなんてどうでもいい。
その点、出来あがったおしるこは大満足だ。私から私に向けた愛情だけで構成されている。自己満足の極致。最高。素晴らしい。
……惜しむべきはこの圧倒的なまでの量か。
鍋いっぱいに広がる黒い海に、私は頭を抱えた。
自分の料理は好きだけど、ついつい作りすぎてしまうのは考え物だ。ぼーっとしてるからよくないんだろうな。
普段は一週間かけて完食するのだけど、おしるこばかりの生活はちょっと耐えきれそうにない。
ふと三沢さんの顔が浮かんだ。
三沢さんっておしるこ好きかなぁ。
しばし迷って、隣の部屋を訪ねてみることにした。おしるこの鍋が重たい。
「三沢さーん。三沢さん、居ますか?」
このアパートにはチャイムがない。扉をこんこんとノックして呼びかけてみる。
少し待っても返事がない。出かけたかな。休日だものなぁ。
私は踵を返して、反対側のお隣へと向かった。反対側に住むのは高校生の男の子で、大学受験の時期だ。勉強の夜食程度に食べてもらえるだろう。
おしるこをこぼさないようにゆっくり慎重に歩きだそうとしたところで。背後から聞こえる物音。
「どうかしたか」
のそのそと、三沢さんが扉から顔を出した。
「あっすみません、起こしましたか」
「いや。どうした」
「おしるこってお好きですか? 作りすぎちゃって、よかったら」
「まあ……嫌いではないが。余ってんなら、じゃあ、もらうかな」
「すみません。ぜひご協力お願いします」
「これ、ぜんぶいいのか」
私の抱える鍋のふたを開けた三沢さんが、量を確認しながら言う。私は面食らった。
すべてを処理してくれるならありがたいけど、量が量だ。一人で食べきれるわけがない。
「まぁ……三沢さんが食べきれるなら……」
「……!」
三沢さんはなにかに気付いたように息を飲んだ。言葉をつまらせ、唇を引き結ぶ。頬はどことなく赤い。
「すまん、丸ごとなわけないよな」
「もしかして、甘いもの好きなんですか?」
「……」
疑問を口に出すと、ぎろりと睨まれる。頬はごましようもなく赤くなっている。
なんだ、そういうことか。私はぷっと吹き出したくなるのをこらえた。私にとっては親近感を表す仕草でもきっとこの人にとっては屈辱だろう。
「好きなんでしたら、好きなだけ食べてくださいよ」
「……」
「いい。あんま好きじゃない」
「ご近所に配ろうと思ってたんです。歩く先があなたで終わるなら、それが楽ですんで。ボランティアだと思ってくださいな」
「……じゃあ」
もらう。と憮然とした呟きが聞こえた。
甘いものが好き、ってことがそんなに隠したいことなんだろうか。
男の人って妙なところにプライドがあるけれど、きっと年配の方だとなおさらなんだろうなあ。甘いもの好きを恥ずかしがる感覚は、私にはよくわからない。
鍋を持って部屋に引っ込んだ三沢さんを、外で待つ。
この辺りは高いビルもなく閑散としているから、二階からでも遠くまで見渡せる。周りは住宅地だけども、小さいながらも森や林が見える。
季節は冬に差し掛かろうとしているから緑は見えないけれど、春になればまた緑をおがめることだろう。
三沢さんが出てきた。扉の隙間から顔を出す。
「お前、もうメシ食ったか」
「いいえ」
「よかったらチャーハン、食うか?」
「ありがたいですけど、悪いですよ」
「作る量が倍になるだけだ」
それだけ言うとまた引っ込んでしまう。
あれ、今から作るってことかな。それは悪い。
鍋が返ってこないので、部屋に戻ることもできない。手持ち無沙汰になりながら景色を眺めていると、また三沢さんが扉から顔を出す。
「忘れてた」
綺麗に洗われた鍋が突き出される。本当に全部持って行ったらしい。
「チャーハン出来たら、そっちに持って行ってやる」
「や、なんか悪いですね」
「大した手間じゃない。ソレ作るよりはな」
味の保障はしねえがな、と三沢さんは付け加えた。独り暮らしの男の料理に大した期待はしないので、安心してほしい。
家に戻ってしばらくすると、玄関をノックされる。三沢さんだ。
「なんかありがとうございます、気を使わせちゃって」
「大した手間じゃねえって言ってんだろ」
三沢さんがぎろりと私を睨んだ。いや、睨んだ気はないんだろう。よくよく見れば、不快そうな表情はしていない。
遠慮する私に、どこか呆れている――というのが、正しいのだと思う。
こういう表情で、三沢さんは誤解されるんだろうか。
私には関係のないことではあるけど、ぼんやりと同情心めいたものがわきあがる。
「三沢さんって損しやすいタイプですね」
「あぁ?」
「私は三沢さんのこと嫌いじゃないですよ」
「なんなんだお前は。いらねえのか」
「ああん、要ります。ご飯食べずに待ってたんですから」
「ふん」
チャーハンを持つ手を持ち上げられ、私は情けない声を出してしまった。そろそろお腹が鳴りそうなのだ。
背伸びをして手を伸ばすと、さらに高くチャーハンを掲げられる。宙を掻く私の手に満足したのか、やっとチャーハンが下りてくる。
「では、ありがたく喰います」
「『いただきます』な」
「ありがたくいただきます」
「それでいい。……お前、へんなとこで敬語崩れるな」
「これでも頑張ってるんですけど。三沢さんは指摘してくださるので助かります。これからもよろしく」
「お前なあ」
頭をさげておじぎをすると呆れたような声。顔をあげると、三沢さんは眉をあげて私を見下ろしていた。
「最近の若者はみんなこんなんなのか」
「あっあっ、それすっごくおっさんくさいですよ」
「うっせぇ」
「おっさんの手料理……」
「う、る、せえ、な。喰い終わったら食器、適当に部屋の前に置いとけばいいからよ」
「了解しました」
三沢さんは私の暴言にも気分を害した様子はない。じゃあな、と言う三沢さんにもう一度会釈をして扉を閉めた。
できたてのチャーハンはお皿越しに手の平を温めてくれる。
ちゃぶ台に移動しながら水蒸気がまとわりつくラップを外した。かぐわしい香りがふわっと広がり、空腹が加速する。
チャーハンは意外なほど美味しかった。口のなかでぱらりと解けるお米の硬さも、卵の柔らかさも私の好みだ。
もっと豪快な味付けでくるかと思っていたが、実際は繊細な味だった。
すぐに食べきってしまう。目の前に三沢さんがいたならおかわりを頼んでいたところだ。
***
後日、夜勤から帰ると玄関のドアノブにコンビニの袋がかかっていた。
ゴミでも置かれたか、と思って中身を確認すると、それは未開封のカップラーメンだった。
いったいなんでこんなものが。袋の底にメモがあった。
『礼だ 食っていい 三沢』
ボールペンでささっと書かれたと思しき、クセのある文字。
おしるこの礼だ、と言うことだろうか。お礼を求めていたわけではないし、チャーハンが十分お礼になっていると思う。そもそもを言うなら、おしるこを引き取ってくれたことにこち
らがお礼を言いたいぐらいなのだけど。
律義な人だなぁ。
私はメモ用紙を見つめながら、ふっと笑ってしまった。
こんな人が怖がられているんだから、世の中ってわからない。もっとも私も、よく話したのはチャーハンの件がはじめてだけど。
今度、ラーメンのお礼にデザートでも差し入れしようか。それは流石に、隣人の領分を越えているか。
まあいい。会ったらお礼を言って、挨拶しよう。
おはようございます、三沢さん。三沢さんって案外細やかな人ですよね――なんて言ったら、あの人はまた呆れるんだろうか。
三沢さんの反応を想像することは面白い。
それにしても、三沢さんの字は個性的だ。決して嫌いではない。そんんなことを思いながら、私は布団のなかへと入った。
ああ、そうだ。覚えてたらチャーハンの作り方聞こう。
深呼吸ひとつで私は夢の国へと落ちて行った。
2014/9/28:久遠晶
2016/11/08:冒頭を加筆、細かい文章修正