小夜嵐

夢絵・漫画

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「ステキな方ですね。このあとお茶でもご一緒しませんか?」
「うん、いいかも。どこに行こうか――きゃッ」

 ジョルノくんの言葉に明るくこたえる途中で、花京院くんに腕を引っ張られた。
 引き寄せられて、かたい胸板に後頭部が当たる。
 思わず見上げた花京院くんは、まっすぐジョルノくんを睨んでいる。私の腕と肩を掴む手が痛い。

「さすがイタリア人は口説くのが早いな。こんなやつ放っておいてぼくとどこかへいこう」
「どちらと行くかを決めるのはあなたではなく彼女です」

 花京院くんのとげとげしい言葉を、ジョルノくんがぴしゃりと制した。
 誘わてるのは私なのだから、まったくもって正論だ。
 いたたまれない。
 明らかに険悪な雰囲気になっているのに、なんでそうなったかわからないのだ。
 こんなふうにあからさまに悪感情を表に出す花京院くんは初めて見る。
 ジョルノくんが嫌いなのだろうか。
 物静かなジョルノくんにはよくわからない不可解な噂が付きまとっている。ギャングを従えているとか、無免許タクシーとか……。あとそれと、なんだっけ、『DIOの息子』……とか? でも、DIOっていったい誰のことだろう。
 なんにせよ、所詮はくだらない噂だ。
 花京院くんは気になるのだろうか? 突拍子もなければ裏付けもない噂を?
 それは花京院くんらしくない。
 だけれど花京院くんは、とにもかくにもジョルノくんを警戒しているらしい。そして、私をジョルノくんに近づけたくないようだ。

 不意にジョルノくんが私のほうを見た。さわやかな瞳に圧倒されてしまう。

「どうしますか? ぼくはどちらでも構いませんよ」
「もちろんぼくのほうだよな」

 花京院くんがすこしだけうざったそうに息を吐く。
 こっちを選べ、と、肩と腕を掴む手が言外に語っている気がした。
 花京院くんは基本的に優しいんだけど、たまに友達――主に私とポルナレフさん――への扱いが強引というか、ぞんざいというか……おおざっぱになる時がある。
 打ち解けた相手に最大限の敬意を払う彼が時折見せる『甘え』なのだろうと、別にいやではなかった。
 いやではないけれど、いい加減に腕が痛いので手を離してほしい。だけど言ったら怒られそうな気がして、委縮する。
 今日の花京院くんは、すこぶる機嫌が悪い。

 対するジョルノは、にこやかな笑顔で私を見ている。出方をうかがうように、あるいは観察するように。
 視線の力が強すぎて、目をそらすことが出来なくなる眼だ。この眼でなにか言われれば、どんな内容であれ有無を言わさず従ってしまうような迫力がある。息がつまると同時に、整った顔立ちになんだか落ち着かなくなってしまう。

 さて……。
 私はどうするべきだろう。
 どちらを選んでも片方は傷ついたり怒るはずだ。
 いや、花京院くんを選んだところでジョルノくんは怒らないだろう。穏やかな瞳のまま、『残念です』と微笑んで許してくれるに違いない――が、私の心に罪悪感が残るのは確かだ。当初はOKしていたのに、掌を返すカタチになるのだから。
 しかしジョルノくんを選ぶと、花京院くんがしばらく拗ねそうだ。

「さ、三人でっていうのは……」
「イヤだ」
「ぼくはあなたとご一緒したいので」

 即答され、いよいよ酸欠になりそうだ。ドイツ軍人はうろたえないけども、私は軍人ではないので気弱になるのも許されてしかるべきだ。
 そもそも私は、こういった二択が好きじゃないんだ。
 選ばなかったほうを軽んじているような、友情に優劣をつけるような気分になるからだ。

 ジョルノと花京院は少女をじっ……と見つめていた。針のように感じられるのは、少女が決めあぐねているからだろうか。

 どうすればいいんだろう。
 少女は迷って……そして答えを出した。

 それは――

・ジョルノ
・花京院
・偶然通りかかった承太郎
・その他

<現在は投票を終了しました。鋭意執筆中>

 なんでジョルノVS花京院なのかというと、ツイッターで『奥手な花京院のケツを叩くのは誰か』みたいな話になって、「ジョルノだったらケツぶったたいてくれるだろう(二歳年下に恋愛沙汰で説教される花京院のなさけなさ)」→「ふたりが女の子を取り合いしてたらくっそかわいいなぁ…」→んで、上の絵と文章に。

 イタリア人らしく猛烈アタック(超押しが強い)するジョルノに、女の子はまんざらじゃないんだ。
 うれしがる女の子に、奥手花京院は「(なんであんな子供になびいてるんだ、きみにはぼくがいるだろうぼくだけ見てろよ)とはとてもではないが言えない……」ってなぐらいにもやもやイライラしっぱなし。
 すごい萌える。





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